先日、親しくしている社長と夕食をご一緒しました。雑談の中で、最近投稿されている動画のクオリティが高く、編集もどんどん上手くなっていると私が言うと、彼はとても誇らしげに「今は独学で編集を勉強していて、手も速いんだ。“カカッ”と一気に作業してすぐ投稿できる」と教えてくれました。彼は楽しそうに、スマホで撮影し、字幕やフィルターを加える流れを熟練の手つきでこなし、撮影時間より編集時間の方が長いことまで語ってくれました。その表情から、このことに大きな熱意と達成感を感じているのがよく分かりました。
その時はあまり深くは言いませんでしたが、最近になって、彼の動画更新頻度が明らかに落ちていることに気づきました。熱中していたのはおよそ3か月ほどで、その後は徐々にペースダウン。理由は容易に想像できます。社長という立場上、毎週のように出張や飛行を繰り返し、重い業務を抱えているため、編集に継続的に時間を割くのは難しかったのでしょう。
この出来事から、私も少し考えさせられました。ひとつのことに腰を据えて集中するのは、確かに喜びや達成感をもたらします。しかし、経営者にとっては時間とエネルギーの配分が極めて重要です。撮影のアイデアが閃いた瞬間にスマホで記録するのはもちろん良いことですが、大量の時間を編集作業に費やすのは本末転倒になりかねません。
私自身の例を挙げれば、ひらめいたらすぐ撮影はしますが、編集作業は専門のスタッフに任せています。その方が効率は高く、技術も優れており、仕上がりも良いからです。経営者として重要なのは、方向性を示し、創意を引き出すことであって、具体的な技術作業に没頭することではありません。興味と効率の間にバランスを見出し、創作の楽しみを味わいながらも、専門家には専門の仕事を任せる――これこそが持続可能な賢い方法だと思います。